平和を考えるために今子どもたちに手渡したい本  第二回 はらまさかず 『かいぶつに なっちゃった』

子どもと平和の委員会

小学校に上がる前に、何度も読み返した絵本があります。
それは、『かいぶつに なっちゃった』(木村泰子 作・絵/ポプラ社)。
今から50年前の1974年に刊行されました(2013年に新装版が刊行され、今も購入することができます)。
あらすじを、ちょっとだけ。

森のおくには大きくておそろしいかいぶつが住んでいる、といううわさがありました。
動物たちは相談し、かいぶつに食べられてしまわないように、脅かそうということになりました。でも、小さな動物たちがどうやって?
そこで、みんなでぎゅうぎゅうにくっついて、大きなおそろしいかいぶつに見えるようにしたのです。ところが、、、
森のおくに、かいぶつなんかいませんでした。みんなはほっとして、もとに戻ろうとしましたが、あまりにもぎゅうぎゅうにくっつきすぎたため、そのままほんとうに一つになり、大きなかいぶつになってしまったのでした。

森のこわがりな、優しい動物たちがかいぶつになってしまい、まわりからおそれられ、拒絶されて、やがてひとりぼっちになってしまうのが、幼いわたしにはどうしても理解できませんでした。かいぶつになってしまった動物たちがかわいそうでかわいそうで、絵本を開いては、ひとりぼっちのかいぶつのページを見て、なんとかならないものかと自分なりに方法を考えたり、またある時は、次に絵本を開いたら、結末がかわっているかもしれないと、なんども本棚まで行ったり来たりしたのでした。
絵本の結末が変わることは、もちろんありませんでした。しかし、大人になって読み返すたび、かいぶつになってしまった動物たちをかわいそうと思う理由が、私のなかで変わっていきました。
世界では争いが絶えません。近くに強い武器を持った国があったら、こっちはもっと強い武器をもたなければ危ない。という考えは、一見、正しく聞こえます。でも、『かいぶつに なっちゃった』を読んで、かいぶつがひとりぼっちになった姿を見たあとでは、それが必ずしも正しい考えとは思えなくなるでしょう。

さて、この本のほかに、私が「手渡したい本」は以下の通りです。
*『絵で読む 広島の原爆』(那須正幹 文/西村繁男 絵/福音館書店)
*『小さなバイキング ビッケ』(ルーネル・ヨンソン 作 / エーヴェット・カールソン 絵 / 石渡利康 訳/評論社)