新!「今の児童書、私の推し」第7回松本聰美
先月、加藤純子さんが推されたのは、小川忠博作『りんご だんだん』でした。
新!「今の児童書、私の推し」第6回加藤純子 – 日本児童文学者協会 (jibunkyo.or.jp)
つややかなリンゴが一年かけて、こんなふうに「地球」の一部にもどっていくのだと目を見張りました。命の循環が伝わってきます。
さて、今月私が推すのは、アメリカの作家キャサリン・アップルゲイト作『ハミングベアのくる村』(偕成社)です。
舞台は地球のどこかにあるパーチャンス村。この村は、近年、山火事や自然災害に悩まされています。
主人公ウィロディーンは11歳の女の子。幼いころ山火事で家族を亡くし、孤児になりました。人と一緒にいるのが苦手で、学校にも行きません。
この少女をふたりの老女が引き取って育ててくれます。村人たちから「魔女?」といわれている人たちです。(このふたりが、とっても魅力的!)
ハミングベアのくる村 – 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp)
物語には、2種の架空動物が出てきます。かわいい声で鳴き、虹色の巣を作るハミングベア、そして醜くて汚くて臭いサケビ―という生き物です。
村人たちは、ハミングベアは観光客を集めてくれるので大切にしますが、サケビ―のことは、賞金を出して駆除します。
ある日、村人たちは気づきました。ハミングベアの数がどんどん減っていることに――。
自然界のものたちが、絶妙なバランスでつながっていることが、強く心に残る物語です。
読み終わった後、私たちが住んでいる「地球」に目を向けざるをえません。パーチャンス村での出来事が、今、あちこちで起こっているように思えるからです。
ウィロディーンは、大好きなサケビ―を村に取り戻そうと、様々な「試み」をします。その過程で人嫌いだった主人公が、逞しく、人と交われるようになっていくのが、爽快です。
アニメーション映画になればいいなと、私はひそかに願っています。
次回は、押川理沙さんです。お楽しみに!!