7・8月号 おまけの情報①

『日本児童文学』編集部

 巻頭エッセイを書かれた杉山亮さんは、ミルキー杉山が登場する名探偵シリーズでおなじみですが、一般向けの著作としてちくま文庫から『子どもをおいて旅に出た』という「旅日記」も出されています。33歳のある日、1つ年下の妻と4歳、2歳の子どもがいる身で、本当にタイトルの通り、子ども(もちろん妻も)をおいて約ひと月、徒歩であてのない旅に出るのです。「あとがき」には旅に出る理由らしきものとして次のような文があります。
〈今、自分が乗っている「暮らし号」というバスが自分の行きたい方向とちがうところに向かっているかもしれないという気がしたら、降りてみるしかない。〉
 これだけ読むと、理屈っぽい自分さがしの旅物語にも思えますがちがいます。ひたすら歩き、次に進んでいく旅のきつさの中で筆者が感じ、考えたことが素直な文体で語られていくのです。
 最初に径書房より刊行されたとき「本の雑誌が選ぶ1993年度ベスト10」に選ばれたとのこと。子どもに大人気の著者のもう一つ別の顔が見えてきます。
 巻頭エッセイにも書かれていますが、7月27日にオンラインで「夏休み特別企画 辞書で遊ぼう!」があります。きっと、ここでも杉山さんの面白いことに真剣に取り組むお人柄が感じられることと思います。ぜひふるってご参加ください。
                        (荒木せいお)