132、学習交流会・文学賞贈呈式、総会が終わりました(2024,5,27)
【まずは学習交流会、贈呈式が】
・24、25日と、総会イベントがあり、昨26日は一日出かけていたので、2日遅れになりましたが、24日の学習交流会と贈呈式・パーティー、25日の総会が無事に終了しました。
例年のことではありますが、お客様を迎えての贈呈式・パーティーは5年ぶり、そして長く事務局長を務めた次良丸さんに代わって、原事務局長の“初陣”となった総会と、いろんな意味で印象深い2日間になりました。
・まずは学習交流会ですが、なんというか、とてもエキサイティングでした。それは前回書いたように、半世紀前に評論家デビューした僕だから特に、という面もあるでしょうが、それは別としても、内容の濃い2時間半だったと思います。
“勝因”の第一は、対象作品と、それについて語る人との組み合わせがビッタシだった、ということでしょうか。『絵にかくとへんな家』について語ったこまつあやこさんは、図書館にお勤めなのですね。とても整理されたお話で、この作品と今の作品との違いや共通点について、書く側の視点はもちろん、読者にとってどうなのかという視点からも問いを立てられて、話されました。
『はらがへったらじゃんけんぽん』について話されたたなかしんさんは、この作品から「作者の(あてどのない)“怒り”を感じる」と言われ、その背景に70年安保があるのでは、とも話されました。僕は前回、この作品について「ちょっと説明不能だけど、僕はこの作品から、何か必死に自己と闘う作家のモチーフを感じた」というようなことを書きましたが、たなかさんから一つ“説明”してもらったような気がしました。また、たなかさんはオリジナルの本が入手できず、この本を青い鳥文庫版で読み、会場に来て初めてオリジナルの本を見て、とても印象が変わったということも話されました。たなかさんはもともと画家で、本の作りや絵に対する感想もなるほどと思ったし、こういうタイプの作品の文庫化の功罪ということも考えさせられました。
『朝はだんだん見えてくる』について語った吉田桃子さんは、岩瀬成子さんがとても好きな作家で、『朝はだんだん』は学生時代に読んだけれど、今回改めて読んで、少し印象が変わったという話をされました。他のお二人もそうですが、今回やはり強く感じたのは、作家の読み方というのは、僕ら評論家の読み方とはどこか違っていて、そこもおもしろいのです。特に吉田さんは、ある意味岩瀬さんのファンでもあるようですが、その岩瀬さんのデビュー作はやはり結構ツッコミどころがあり、けれどそれ故の迫力もあり、ということで、作家・吉田桃子と作家・岩瀬成子の対決?みたいな趣がありました。
今回は、三人の話の後、6人ずつくらいに分かれてのグループセッションという初の試みもあり、いやあ、おもしろかった。
【そして贈呈式では】
・一時間の間をおいて、文学賞贈呈式が始まりました。冒頭で書いたように、お客様を迎えての贈呈式は5年ぶりです。ここで印象的だったのは、新人賞の水凪さんと三越賞の松山さんのスピーチでした。
水凪さんの受賞作は、短編連作のファンタジーで、僕は賞の選考のために初めて読み、「こんな才能の人がいたんだ」と、ちょっとびっくりしたのですが、その水凪さんのスビーチで、彼女が協会の通信講座で学び、担当講師だった濱野京子さんの同人グループに加わって研鑽された、ということを初めて知りました。
また、三越賞の松山さんは、児童文学を志したものの、どうやって勉強したらいいかわからなかった時、図書館で(ということだったと思いますが)『日本児童文学』と出会い、「ここには、私の知りたいことがすべてある」と思われたのだそうです。松山さんは会員でもあり、お話したこともありますが、これも初めて知ったことでした。なんだか二人のスピーチが、結果的に協会の講座や機関誌のPRみたいな感じにもなって、ちょっと面映ゆいような心持ちにもなりました。翌日の総会の論議の主要なテーマが『日本児童文学』の普及のことだったのですが、松山さんのお話が自ずからその答になってくれたようにも思われました。
【翌日の総会で】
・そして、翌25日、総会があり、二年に一度の役員改選がありました。今回の(かつての活動方針に代わる)「総括文書」のテーマは、上記の機関誌の問題と共に、会の「世代交替」ということでした。今期は、仙台の佐々木ひとみさん、三重県の村上しいこさんという遠方の方を含め(これはリモートの威力)、朽木祥さん、辻貴司さん、長江優子さんと、今まで以上に新しい顔ぶれになっています。前期の最後の理事会では、そうしたことも意識して理事長も新しい人に交替した方がいいという意見も率直に出されましたが、結論としては僕がもう一期務めて、そうした新しい体制への橋渡しをみんなでやっていこうということになりました。
なので、このブログもあと二年間続けることになります。改めて、よろしくお願いします。