新!「今の児童書 私の推し」 第3回 いとうみく

子どもと読書の委員会

2024年もあっという間に上半期終了の月です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
昨年度大好評だった(たぶん)ということで、

引き続き今年度も部員それぞれが好き勝手に推し本を紹介させていただいています。

ということで、今月はわたくし、いとうみくが担当させていただきます。
第2回目の田部智子さんの推し本『あめだま』(ブロンズ新社)みなさま読まれました?

私は未読だったのですが、紹介文とプロモーションビデオを拝見して、

これは図書館ではなく購入でしょ! と本屋さんに注文しました。

まさに買ってよかった!という一冊でした。

 

さて、私の推し本は、『むこう岸』がテレビドラマ化されるなど、いま注目の実力派の作家、

安田夏菜さんの『アナタノキモチ』(文研出版)です。

アナタノキモチ 安田夏菜(著/文),他 - 文研出版

文研出版 – 新興出版社啓林館 (shinko-keirin.co.jp)

物語は、ハル君(5歳)をある事情で同居している祖父母が引き取るというところから始まります。

ところがハル君の言動はなにかおかしい。病院に連れて行くと、自閉症スペクトラムの傾向があると言われます。

そんなハル君との数年間の生活を、従姉にあたる同い年のひよりと

自己中でおこりっぽくて、おまけに発達障害というものをまったく理解できない祖父が語り部となって描かれます。
家族それぞれにすれ違うキモチに、ひりひりしたりいらいらさせられたり、ときにぷっと笑わせられたり。

テーマはシリアスですが、ユーモラスな描き方で読み手を引き付けます。
懸命に生きる人間の姿は、滑稽でそして愛おしい――。

安田作品の魅力が詰まった一冊です。

 

次回7月の担当は、かわのむつみさんです。どうぞお楽しみに!