新!「今の児童書、私の推し」第2回田部智子

子どもと読書の委員会

さわやかな新緑の季節、新!「今の児童書、私の推し」、第2回目は田部智子が担当いたします。

前回担当しめのゆきさんの推しは『ねこひげぴぴん』(え●ミース・ファン・ハウト ぶん●ほんまちひろ 西村書店)でした。

詩画集『いいねこだった』で、第37回日本児童文学者協会新人賞を受賞なさった本間ちひろさん。

こちらの絵本でも、珠玉の言葉で読者にねこさんを届けてくださっていますね!

 

さて、今回の推し本はこちら!『あめだま』(作/ペク・ヒナ 訳/長谷川義史 ブロンズ新社)

初版が2018年と少し時間がたっていますが、隣国の作家さんの大好きな作品です。お許しください。

 

公園でひとり遊びをする孤独な少年ドンドンは、お店で不思議なあめだまを買います。

家に帰って一粒口に入れると、おずおずと話しかけてきたのはなんとリビングのソファーでした。

「ドンドンくん……おれはソファーや きみのいえのソファーや」

最近ドンドンを避けている様子の、飼いイヌのグスリの本音も聞こえてきます。

「ドンドンよ おまえは まえからワシのことを ひとつ ごかいしてる……」

あめだまをなめるたび、身近な物や人の、言うに言われぬもどかしい愛の言葉が届きます。

その言葉に、心を閉ざしかけていたドンドンの頑なな気持ちは、やわやわと溶かされていくのです。

そして、ひそかな声に誘われて外に出て行った彼を待っていたのは……。

クライマックスの公園の光景は、息をのむほどの美しさ!!

きっと読者はみな、この独特な表現の絵本に引きこまれていくことでしょう。

長谷川義史さんの大阪弁の訳文が耳にやさしく、物語の世界へといざなってくれます。

最初の見返しと最後の見返しも見比べてください。絶対お見逃しなきように!

 

作者ペク・ヒナさんは韓国の絵本作家。粘土を使った独特な3Dイラストレーション、アニメーションの作家でもあります。この絵本で、2020年韓国初のアストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞に輝きました。こちらの紹介動画も合わせてご覧ください。(『あめだま』プロモーションビデオ

 

次回6月は、いとうみくさんが推し本をご紹介くださいます。ご期待ください!