124、名探偵登場(2024,1,25)

理事長ブログ

【被災地では】
・昨日から、今年一番の寒波ということで、能登地方の大雪が報じられています。ライフラインの復旧が遅れる中で、本当に大変な日々と思います。よく言われることですが、普段の生活が便利になった分、こういう時は大変なことになりますね。僕が子どもの頃は(秋田の農村地帯で)、水はポンプ井戸、暖房は薪ストーブでした。さすがにランプではなかったわけですが、そういう“不便”な時代であれば、逆に復旧も楽なわけで、前から思っているのですが、例えば公園には必ず井戸を掘っておくとか、そうした備えが必要なのではないでしょうか。
【さて、“名探偵”の話です】
・昨日、新幹線が「停電」で、東北新幹線などが完全にストップするという事態になりました。復旧に当たっていた作業員の方が感電で重症というのも案じられます。
僕は昨日、いくつか片付けたいことがあり、事務局に出かけていました。今は事務局に出るのは、大体週に1回程度です。外で昼食を済ませ、事務所に戻ると、来客がお一人いました。見知らぬ方ですが、なんとなく会ったことがあるような気もします。原さんと話をしていたので、僕は引っ込んだのですが、二人の会話で来客の“正体”がわかりました。偕成社の「名探偵」シリーズでおなじみの、杉山亮さんでした。
実は、この日、朝に事務局に着いた時、手紙が届いていて、それが杉山さんからの手紙だったのです。僕も半分?忘れていましたが、家の光協会の『ちゃぐりん』の8月号に載せる短編の作者を推薦してくれと言われて、杉山さんの名前を挙げたのでした。なぜ8月号かというと、前も書きましたが、この雑誌では雑誌掲載の記事やお話を対象にした感想文コンクールをやっていて、僕はその審査員をしています。7、8、9月号が対象ですが、時期からいって8月号の記事についての感想文が一番多いようです。ただ、全体としてお話よりも、編集部が取材した記事の方への感想文が多く、それはそれでこの雑誌らしくていいのですが、特に8月号の短編には、力を入れたいわけです。杉山さんは、もちろん「名探偵」シリーズが有名ですが、講談社から出た『空を飛んだポチ』に始まる三部作が絶妙です。
これは、「杉山亮のものがたりライブ」という副題がついていて、三つほどのお話からなっているのですが、ほら話というのか、程よい奇想天外さというか、とにかくおかしく、おもしろく、僕はすっかり感心して、書評を書いたりもしました。実際、杉山さんは子どもたちにこうしたお話を聞かせる「ものがたりライブ」をやっていて、そこから生まれた作品でもあるわけです。
手紙というのは、「『ちゃぐりん』に紹介いただいたそうで」という礼状で、むしろお引き受けいただいたこちらがお礼を言いたいところでしたが、「折があれば、一度協会にうかがいたい」とも書かれていました。もちろん大歓迎で、返事を書かなくてはと思ったばかりのことでした。
・さて、なぜこの日、僕からの返事を待つ間もなく?杉山さんがいらしたのかというと、原因は上記の新幹線の事故です。杉山さんはこの日、青森に行かれる予定だったのだそうです。しかし、新幹線が動く見込みはなく、思い立って、協会の事務局を訪ねようと思われたわけです。しかも、その日、たまたま僕がいて、お会いできたというのも、まことにラッキーなことでした。
・ちゃんとお会いするのは今回が初めてでした。杉山さんと言えば、“保父”さん出身というのが、この世代では珍しい存在ですが、聞けば、大学を中退して保育の専門学校に入ったのですが、むしろ老人などの介護の仕事を意識していたが、その学校で学ぶうちに保育者をめざす気持ちになったということ。そして、男の学生は杉山さんただ一人。しかも、当時は保育者になれるのは女性と(法律上)決まっていて、便宜上調理員として就職し、保育者になったというお話でした。
・「名探偵」シリーズといえば、主人公の「ミルキー杉山」自体に謎があって、結婚しているのですが、奥さんとは別居、だけど離婚はしていない、という境遇?です。その設定がなぜか、ということが気になっていたので聞いてみたら、「多分それは最後まで謎です」というお答でした。離婚はしない、だけど一緒には住まない、という距離感は、もしかして、保育の専門学校で圧倒的に女性たちに囲まれて過ごした杉山さんの体験が影を落としているのでは……、というのが、後で考えた僕の推理。どうでしょうか?
・そして、この日、杉山さんは入会申込書を書かれて、帰られました。協会に、名探偵が加わります。