「今の児童書 私の推し」第5回 鳥野美知子

子どもと読書の委員会

 

こんにちは。今月バトンをけ取ったのは、鳥野美知子です。第4回は、かわのむつみさん推しの『あこがれのユーチューバー』牧野節子・作(国土社)でした。中学生ユーチューバーまで活躍する昨今、ラップと古典芸能紙きり芸のコラボが楽しくて、ワクワクしました。四年生の夏休み、男の子の友情の物語です。「今の児童書 私の推し」 第4回 かわのむつみ

私が推す『じゅげむの夏』最上一平・作 マメイケダ・絵(佼成出版社)も、四年生の夏休みの話です。

山間の天神集落に住む四人組の男の子たちの友情と冒険の物語。この話には、古典落語「じゅげむ」を愛する筋ジストロフィーのかっちゃんが登場します。「あのさあ、四年生の夏休みを、最高の夏休みにしようよ」かっちゃんの提案で、みんなで冒険を考えます。あったあった、集落には伝説の熊吉つぁんがいて、天神橋の飛び込みがあり、おばけトチノキなどなど、彼らの周りには、冒険がいっぱいでした。天神橋の飛び込みは、この集落のならわしです。たいがい三年生くらいまでは行い、三人は経験していましたが、かっちゃんはまだでした。「ぼくもとびたいんだよ。来年になったらとべなくなるかもしんねえし」そして決行します。大人の目とか、安心安全とか取っ払い、子どもたちの友情で、かっちゃんは、小さな子どもを卒業します。夏はなんどもやって来ますが、今年の夏は一度だけ!

この本は、絵もすごくいいです。ムンムンとした草いきれの緑に青い青い空と入道雲。ザ、日本の夏が表紙です。挿絵もみな、愛おしい。私の師であり推しでもある最上一平さんは、同郷です。最上作品は、いつでも山形愛・人間愛に満ち溢れています。最上さんには、たくさんの絵本、創作物語がありますが、どの作品も温かいセーターみたいに、優しさと、ぬくもりとユーモアと、愛が編みこまれています。この夏は、ものすごい猛暑でしたが、山形名物のパインサイダー(山形なのに、なぜパイン?)のように爽やかな『じゅげむの夏』を読んで、スカッとしてください。

次回12月の担当は、加藤純子さんです。どんな本を推してくださるのでしょう? すごく楽しみです。

じゅげむの夏 – 佼成出版社-書籍紹介 (kosei-shuppan.co.jp)