日本児童文学 2024年11・12月号

特集 深呼吸のとき -環境危機と子どもの本-

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特集 深呼吸のとき -環境危機と子どもの本-

環境問題は、戦後の経済成長期からすでに日本児童文学のひとつのテーマでもありましたが、1992年のリオデジャネイロでの「地球サミット」(国連主催、主題は温暖化と森林破壊)、97年の「京都議定書」などを経て、2000年代以降、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、1989年設立)の気候変動についての連続的な報告や、それを受けた「パリ協定」(2015)やSDGs(国連「持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals」2015~2030)の時代において、喫緊の危機として意識されています。人間の経済活動が地球環境に明らかに影響を与えているとして、現在の地質年代を「人新世」と名づける学識も広がっています。そのような中、2018年、当時15歳だったグレタ・トゥーンベリさんが「環境のための学校ストライキ」を始めたことを皮切りに、当事者としての子どもたちからもさまざまな声が上がっています。そうした子どもたちの声に対して、児童文学はどのように向き合い、応えていくことができるでしょうか。
この複雑な問題に対して、すぐに答えがほしい、急いで対処しなければ……とはやる気持ちはありますが、本特集では、いまいちど深呼吸をして、環境危機および複合的につながりあう問題に向き合う子どもの本のあり方を考えてみたいと思います。生産、発展、成長のイメージで彩られがちな児童文学において、立ち止まる、踏みとどまる、修復するといったイメージを大切にしながら、未来を生きる子どもたちの心と言葉に寄り添う道をさぐってみたいと考えています。

目次紹介

日本児童文学2024年11・12月号  ―もくじ―

《再録》日本児童文学 復刊2号(表紙) 解題「坪田譲治」  6
《再録》私の創作手帖「文学精神ということなど」……坪田譲治  7
《再録》「風の中の頃のこと」……坪田譲治  8

《詩》「聞こえるよ」……小郷文子 10
《詩》「まほうのことば」……大澤桃代 12
《短編》「オソロシドコロ」……八束澄子 14
《短編》「サラマンダーのむすめ」……天川栄人 20
《掌編》「ループ」……工藤純子 26
《掌編》「とりあえず空が青ければ」……草下あきら 28
《掌編》「なわとびチャレンジ」……山﨑道子 30

特集 深呼吸のとき ―環境危機と子どもの本―

〈エッセイ〉森がなくては生きていけない ……岩瀬成子 34
〈エッセイ〉今、いちばん気をつけたいこと ……那須田淳 36
〈エッセイ〉野生動物から考える環境問題 ……今西乃子 38
〈エッセイ〉「へー」も積もれば山となる ……安田夏菜 40

【論考】環境危機と児童文学――「わかりやすさ」に抗う ……小林夏美 42
【論考】滅びゆく地球に生きる少年少女の終末物語 ……中西新太郎 48

【公開おしゃべり】
児童文学者は社会とどうコミットするか
      ~環境と平和を考える~ ……西山利佳・濱野京子 54

《環境危機を深呼吸しながら考えるブックガイド》
  ●絵本・絵童話 ……62  ●児童文学 ……63 ●一般書 ……65

 
〈子どものつぶやき こんな〇〇はいやだ! 最終回〉こんな本はいやだ! 66
〈児童文学に喝‼〉自分自身に喝! ……皿海達哉 67
〈世界にひらく窓〉フランスの子ども事情 ……はしづめちよこ 68

《創作時評》…… 葦原かも、武藤清吾 70
《同人誌評》……ながいくみこ、美才治幸子、八重瀬けい 78

◆第10回「子どものための感動ノンフィクション大賞」発表 84

◇読者のページ 96

■連載・インタビュー― 作家とLunch ~創作のひみつを探る~12 (最終回)……ひこ・田中 97
■連載・創作―「万丸食堂、奇跡のソフトクリーム」(最終回)…山本悦子 104

・ブックラック……76  ・投稿作品賞選評……92   
・子どもの本の情報館……90 ・執筆者プロフィール……115
・次号予告……91      ・編集後記……116

●表紙絵/植田 真  ●レイアウト/榎本事務所