活動の概要
日本児童文学者協会では、文学団体として、研究活動や著作権の取り組みのほか、機関誌発行、講座開設などを始めとして、広く児童文学に関心を持つ方々に向けた活動を展開しています。
ここでは、その概要をご紹介します。それぞれの詳しい内容については、ホームから該当するページにアクセスしてください。
児童書、一般書の編纂
それぞれの出版社と提携し、子ども向けのアンソロジーを企画し、編纂しています。現在発行されているものとしては、「その一言から生まれる物語」(偕成社)「百物語」(文溪堂)「24時間のキョーフ」(フレーベル館)などのシリーズがあります。
これらのシリーズ編纂に当たっては、収録作品を公募する場合もあります。
さらに、児童文学に関心を持つ人たちや評論・研究をめざす人たちに向けた一般書の編纂も行なっています。この分野では「現代児童文学論集(全5巻)」(日本図書センター)「徹底比較 賢治VS南吉」(文溪堂・電子書籍としてアップ)などがあります。
講座の開設
主に、児童文学の創作を志望する方たちのために、次のような講座を開講しています。どの講座からも、これまで多くの作家を輩出しています。
〈定期講座〉
日本児童文学学校(現在第51期) | 講義と(希望者が提出した作品の)実作指導を組み合わせた、どちらかといえば入門的な総合講座です。例年春から秋まで、全6回程度です。 |
創作教室(現在第76期) | 4~9月、10~翌年3月のパターンで、前期・後期いずれも開講しています。受講者からの提出作品を、講師を中心に合評していくゼミ形式の講座です。対面の教室とは別に、地方の方や外出しにくい方のためにオンラインの創作教室も開設しています。 |
実作通信講座(現在第39期) | 講師と1対1で、メールや手紙で添削を中心とした個別指導を受けます。4月から翌年3月までの1年間で学びます。これとは別に、創作の初歩から学びたい方のために、「実作通信講座ビギナーズ」も開設しています。 |
〈一日だけの講座〉
「絵本」「ノンフィクション」「少年詩」「ファンタジー」など、ジャンル別の一日講座も、年に1回程度もしくは隔年のペースで開催しています。
研究会、セミナーの開催
毎年、主に秋の時期に、「公開研究会」を開催しています。東京と地方の交互開催で、講演、シンポジウムなどの内容ですが、地方開催の場合は、実作指導などの分科会が置かれる場合もあります。このほか、関西センターや支部との共同で、独自のセミナーも随時開催されています。
協会主催の研究会が契機となって、現在自主的に行なわれている常設の研究会として、少年詩・童謡研究会、評論研究会、ファンタジー研究会があります。これらの例会案内は、『日本児童文学』の情報欄に掲載されています。
文学賞の制定と作品募集
協会が制定している文学賞には、以下のものがあります。
〈出版された本の中から選考する児童文学賞〉
例年、3月末ごろに決定、『日本児童文学』5・6月号に選考経過が発表されます。
日本児童文学者協会賞
前年に出版された、創作単行本(ノンフィクションを含む)、詩集、評論・研究書を対象として、ベスト1に贈られる文学賞です。
日本児童文学者協会新人賞
分野は協会賞と同様で、新人の著作3冊目までが対象となります。原則として、ジャンル別2点受賞です。
三越左千夫少年詩賞
詩人の故三越左千夫氏のご遺族からのお申し出により少年詩振興のために創設された賞で、現在は協会が運営。前年に出版された中堅・若手の詩人のすぐれた詩集に贈られます。
〈新人登場のために原稿募集を行っている文学賞〉
長編児童文学新人賞
長編の創作作品が大賞で、例年8~9月に募集しています。小峰書店共催で、入選作品は同社から出版されます。
子どものための感動ノンフィクション大賞
子どものためのノンフィクション作品を隔年で募集しています。奇数年にまず計画書の形でご応募いただき、一次選考を通ったものについて翌年に作品をお寄せいただきます。学研共催で、大賞作品は同社から出版されます。
絵本テキスト大賞
絵本のためのテキスト(文章)を募集するものです。童心社共催で、入選作品は同社から出版されます。例年4~6月に募集しています。
児童文学者協会評論新人賞
児童文学に関する評論を、隔年で(奇数年12月末の締め切り)募集しています。入選論文は、『日本児童文学』に掲載されます。
「日本児童文学」投稿作品賞
隔月刊『日本児童文学』の読者を対象とした賞で、短編の部と詩・童謡の部があります。
国際交流
世界の児童文学者との交流、特に中国、韓国、台湾など、東アジアの児童文学者との交流を深めてきました。隔年で開催されるアジア児童文学大会には、アジア児童文学日本センターに協力し、国内からの参加呼びかけを行なうと共に、日本での開催に際しては、実行委員会に参加するなどして運営に協力しています。
著作権に関わる問題への取り組み
文学団体として、著作権をめぐるさまざまな課題に対応しています。著作者団体協議会、出版物貸与権管理センター、児童書出版者著作者懇談会などに参加して、他団体とも共同して取り組んでいます。会員に向けて著作権に関する情報を提供し、個々の相談にも応じています。
子どもの読書環境の充実のために
学校図書館整備推進会議などに加盟して、子どもたちの読書環境の整備のために他団体と連携しながら、活動しています。また、子どもたちがお話の創作を通じて物語の楽しさを体験できるよう、日本児童文芸家協会、公文教育研究会と共同して、幼児から中学生までを対象とした「おはなしエンジェル 子ども創作コンクール」を実施しています。
子どもの権利と平和を守るために
敗戦後間もない1946年に創立された協会の原点の一つは、戦時中に心ならずも児童文学、児童文化の分野で戦争に加担したことへの、反省の思いがあります。子どもたちの権利と平和が守られるよう、そして文学者の表現の自由が確保されるよう、学習会などを開催したり、声明を出すなどして、社会的なアピールを行っています。