小学校六年生の由羽来(ゆうら)は、父に強制的にスイミングクラブに通わされていますが、本当はクラシック音楽をやり、将来はオーケストラに入りたいと夢みています。ですが、父に逆らえず、泳ぐ間だけ音楽を頭の中で流して気持ちを保っています。家庭でも父のDVで母と由羽来は萎縮し、由羽来には音楽以外に希望がありません。
由羽来には、前から気になっていることがあります。 ドボルザークの交響曲「新世界より」の第二楽章に、一瞬、音がとぎれる部分があるのです。その音のない一瞬が、由羽来に新しい世界を見せてくれ、由羽来自身が自分で希望をつかみとるまでの物語です。
(第58回講談社児童文学新人賞佳作入選作)