東野 司(とうの つかさ)
●いつ、どんなきっかけで入ったのか
それは、2013年のこと。池袋ジュンク堂書店でトークショウが開かれました。日本SF作家クラブ創立50周年記念イベントです。岩崎書店とのコラボ『21世紀空想科学小説』シリーズ全9巻のプロモーションで、企画立案者兼執筆者の私も登壇していました。児童SFへの熱い想いを語りました。その上に、児童文学へもアプローチしたいという個人的な気持ちも吐露したと記憶しています。
イベント終了後、お客様の見送りをしていた私に、司会のO氏からある人を紹介されました。
それが児童文学者協会会員の河野氏。なんでもその日の午後、別件でO氏と打ち合わせがあり、この後どうですかと誘われたとのこと。で、たまたまその日は時間があり、たまたま池袋が帰り道だったので、来場したということでした。実は、河野氏もSFが好きだったということがわかるのは少々後のことですが……。
で、トークを聞いていたら、私が今後児童文学も書いていきたいと言っていたので、あいさつを……ということでした。満席のお客さんの送り出しがあったので、その時は名刺交換で終わったのですが……。
しかし、です。
後日、『21世紀空想科学小説』シリーズの私の執筆本『何かが来た』を河野氏にイベントのお礼かたがたお送りしたところ、ていねいなメールが届きました。そして、末尾には、児童文学を書いていくなら、児童文学者協会への入会はどうですかと、さりげなくひかえめに記されていたのです。
ああ、これこそ「ご縁」だと思いました。心おどり、すぐに入会させてくださいと、お返事を書いたのが、2013年11月のことです。
そして、2013年12月に入会させていただき、今に至るわけです。
あの日、O氏と河野氏の打ち合わせがなければ、河野氏に用事があれば、はたまたイベントの場所が新橋や神田有楽町だったら、河野氏はイベントに来ておらず、私はここにこのような文をしたためることもなかったのだと、思います。
ああ、まさに天の配剤というか、偶然は必然というか、はたまたそんなものは無関係か、まったく世の理はわからないものです。
どっとはらい。
●入ってよかったこと
入会したのは、児童文学を書きたいと海原にこぎ出してみたものの、茫漠たる大海のありように、どうしようかと漂うしかなかった、まさに、そのとき。
新入会員の集いで、丘修三理事長(注:当時)からお話がありました。
「会員になったということは、常に子どもの側に立つという覚悟を持つということです」
私にとって、そのお言葉が北極星となりました。
迷ったとき見上げると、それはたしかにそこにあり、目指すべきところ、立つべきところを教えてくれます。
●プロフィール
1957年生まれ。作家。『ミルキーピア物語』シリーズ『ProjectBLUE地球SOS』『何かが来た』『ねじれた時間のキョーフ』(共著)など。日本SF作家クラブ、日本文藝家協会所属。