日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第11回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は昨年より683編増え1758編(Aグレード847編・Bグレード911編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から9月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品として、Aグレード19編。Bグレード26編を選びました。11月2日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレードは「トイレゆうえんち」おがわみかこ)「おかのうえのトランポリン」(阿知波周生)「わたしおしえてあげたんだ」(小林夏久)「タイトルなし」(たまきあみ)「しろのえほん」(丸目花)の5編でした。またBグレードは「かえりみち」(花うさぎ)「おおかみはチキンが食べたい」(岩崎玉恵)「おべんとうばこ」(西田伸昌)「食いしん坊な蚊」(早乙女純章)の4編でした。議論の結果、今回はAグレード、Bグレード共に大賞はなしと決まりました。優秀賞についてはそれぞれ1編ずつが決まりました。
Aグレード 優秀賞「しろのえほん」(丸目花)
Bグレード 優秀賞「おべんとうばこ」(西田伸昌)
Aグレードの優秀賞を受賞した「しろのえほん」は白に着想したセンスは面白い。しかし作品として絵が見えていない。
Bグレードの優秀賞を受賞した「おべんとうばこ」は書き慣れた印象の作品ではあるが、おべんとうばこの蓋をした時どういうイメージになるのか。その辺りがよく見えてこない。以上が総評です。
今回は1758編とこれまでにない応募総数でした。けれど総じてレベルが低かったという厳しい意見が飛び交いました。なぜそうなったかについての議論も行いました。まず絵本の特性である「ページをめくる」ということへのドキドキ感やリズム感が弱い。読者に伝わるように書いているか。読者に伝わる表現を工夫しているか。子どもたちの心のゆらぎについても丁寧にすくい取って書いているか。書きながら場面が浮かんでいるか。これは声に出して読むことで確認できるはずです。また力のある絵本作品をもっと読んで欲しいです。特にBグレードはストーリー性を考えて作った場合、たとえ幼年童話的であっても、読者対象を意識して書いてあれば、幼年童話の書き手としての資質や可能性を見出していくこともやぶさかではない。そういった話し合いが行われ、次回からは、これまでのようなシステムではなく、ご応募はAグレード1編とBグレード1編と、制限をつけることにしました。
それは絵本テキストを書くことをもっと大切にして欲しいからです。絵本テキストを書くことの意味。そして作家の登竜門であるこの「絵本テキスト大賞」に応募することの意味を考えていただき、命をかけて書く。他の誰にも書けない発想を生み出す。そうした意気込みでのぞんでいただきたいという願いからこうしたシステムにしました。
第12回も、新しい発想の作品をお待ちしております。
◆主催 日本児童文学者協会/童心社
第11回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)